作品紹介

第1章

印象派以前のモネ

Monet, His Early Works

パリで生まれたモネはル・アーヴルで成長し、風景画家ブーダンとの出会いを契機に戸外で風景を描き始めました。画家を志して18歳でパリに出て、アルジェリアでの兵役を経て絵の勉強を続けます。画塾で出会ったピサロ、ルノワール、バジールらと親交を深めました。画家の登竜門であるサロンに1865年に初入選しますが、審査の厳しくなった保守的なサロンでは評価されず、その後は落選が続きました。1870年に普仏戦争が始まるのを機に、妻子とともにイギリスとオランダに滞在します。本章では、初来日の大作《昼食》やオランダで描いた風景など、モネの初期作品をご紹介します。

ルーヴル河岸

1867年頃 油彩、カンヴァス 65.1×92.6cm デン・ハーグ美術館
© Kunstmuseum Den Haag - bequest Mr. and Mrs. G.L.F. Philips-van der Willigen, 1942

1867年春、モネが許可を得てルーヴル宮殿の東ファサードから見下ろして描いた作品と考えられています。カンヴァスの上半分を空が占め、下半分はルーヴル河岸(ルーヴル通り)を往来する馬車や人で賑わいます。セーヌ川を挟んだ遠方のパリ左岸にはパンテオンのドームが見えます。伝統的な様式で描かれた、モネには珍しい都会の風景です。

昼食

1868-69年 油彩、カンヴァス 231.5×151.5cm シュテーデル美術館
© Städel Museum, Frankfurt am Main

食卓に座るのは、後に結婚するカミーユと息子のジャン。幸せそうな2人を見守る来客の女性と、様子をうかがう使用人の姿もあります。プライベートな情景をモネは高さ230cmを超える大きなカンヴァスに描きました。周到に準備した意欲作でしたが1870年のサロンに落選。希少な「モネの黒」を味わえる初期の代表作は今回が初来日です。

ザーン川の岸辺の家々

1871年 油彩、カンヴァス 47.7×73.7cm シュテーデル美術館
© Städel Museum, Frankfurt am Main