作品紹介

第4章

連作の画家、モネ

Series Paintings

1883年、モネはセーヌ川流域のジヴェルニーに定住します。やがて、自宅付近の積みわらが光を受けて刻々と変化する様子を同時進行で何枚も描くようになりました。1891年にデュラン=リュエル画廊でそれらを「連作」として展示すると大好評を博し、国際的な名声を築きました。以後は別のテーマでも次々と連作に着手します。1899年からはロンドンを訪れ、〈チャリング・クロス橋〉や〈ウォータールー橋〉などに取り組みました。「連作」という手法の着想源の一つにはモネが愛好した日本の浮世絵版画の影響も指摘されています。

ジヴェルニーの積みわら

1884年 油彩、カンヴァス 66.1×81.3cm ポーラ美術館

積みわら、雪の効果

1891年 油彩、カンヴァス 65.0×92.0cm スコットランド・ナショナル・ギャラリー
© National Galleries of Scotland. Bequest of Sir Alexander Maitland 1965

モネは1880年代中頃から91年にかけてジヴェルニーのアトリエ周辺で多くの積みわらを描いています。1886年までに描かれた積みわらは家畜の飼料用の干し草の山ですが、1890年から91年に描かれた積みわらは、脱穀前の麦を積み上げたものです。「連作」では、似た構図の〈積みわら〉が、天候や時間、季節による光の効果の違いによって描き分けられています。

クルーズ渓谷、曇り

1889年 油彩、カンヴァス 73.5×92.5cm フォン・デア・ハイト美術館
© Von der Heydt-Museum Wuppertal, photo: Medienzentrum Wuppertal

クルーズ渓谷、日没

1889年 油彩、カンヴァス 73.0×70.5cm ウンターリンデン美術館
Photo © Musée d’Unterlinden, Colmar, France, Dist. RMN-Grand Palais /
Christian Kempf / distributed by AMF

テムズ川のチャリング・クロス橋

1903年 油彩、カンヴァス 73.0×100.0cm
吉野石膏コレクション(山形美術館に寄託)

チャリング・クロス橋、テムズ川

1903年 油彩、カンヴァス 73.4×100.3cm リヨン美術館
Image © Lyon MBA, Photo Alain Basset, B 1725

ウォータールー橋、曇り

1900年 油彩、カンヴァス 65.0×100.0cm ヒュー・レイン・ギャラリー
Collection & image © Hugh Lane Gallery, Dublin

ウォータールー橋、
ロンドン、夕暮れ

1904年 油彩、カンヴァス 65.7×101.6cm ワシントン・ナショナル・ギャラリー
© National Gallery of Art, Washington.
Collection of Mr. and Mrs. Paul Mellon, 1983.1.27

ウォータールー橋、
ロンドン、日没

1904年 油彩、カンヴァス 65.5×92.7cm ワシントン・ナショナル・ギャラリー
© National Gallery of Art, Washington.
Collection of Mr. and Mrs. Paul Mellon, 1983.1.28

モネは1899年から1901年に3度ロンドンを訪れ、テムズ川に架かる橋や国会議事堂などの連作を手掛けました。その中でもこのウォータールー橋は一番多く描かれた題材で、滞在したホテルからテムズ川下流の方向を見て描かれています。モネはわざわざ霧の深い冬を選んでロンドンを訪れるなど、ロンドン名物の霧を透過する複雑な光の様相を捉えようとしました。