作品紹介
第4章
連作の画家、モネ
Series Paintings
1883年、モネはセーヌ川流域のジヴェルニーに定住します。やがて、自宅付近の積みわらが光を受けて刻々と変化する様子を同時進行で何枚も描くようになりました。1891年にデュラン=リュエル画廊でそれらを「連作」として展示すると大好評を博し、国際的な名声を築きました。以後は別のテーマでも次々と連作に着手します。1899年からはロンドンを訪れ、〈チャリング・クロス橋〉や〈ウォータールー橋〉などに取り組みました。「連作」という手法の着想源の一つにはモネが愛好した日本の浮世絵版画の影響も指摘されています。
ジヴェルニーの積みわら
積みわら、雪の効果
モネは1880年代中頃から91年にかけてジヴェルニーのアトリエ周辺で多くの積みわらを描いています。1886年までに描かれた積みわらは家畜の飼料用の干し草の山ですが、1890年から91年に描かれた積みわらは、脱穀前の麦を積み上げたものです。「連作」では、似た構図の〈積みわら〉が、天候や時間、季節による光の効果の違いによって描き分けられています。
クルーズ渓谷、曇り
クルーズ渓谷、日没
テムズ川のチャリング・クロス橋
チャリング・クロス橋、テムズ川
ウォータールー橋、曇り
ウォータールー橋、
ロンドン、夕暮れ
ウォータールー橋、
ロンドン、日没
モネは1899年から1901年に3度ロンドンを訪れ、テムズ川に架かる橋や国会議事堂などの連作を手掛けました。その中でもこのウォータールー橋は一番多く描かれた題材で、滞在したホテルからテムズ川下流の方向を見て描かれています。モネはわざわざ霧の深い冬を選んでロンドンを訪れるなど、ロンドン名物の霧を透過する複雑な光の様相を捉えようとしました。