作品紹介

第2章

印象派の画家、モネ

Monet, the Impressionist

1871年末から、モネはパリ郊外のアルジャントゥイユで暮らし始めます。モネと仲間たちは1874年春、パリで第1回印象派展を開催し、サロンとは別に発表の場を設けて活動しました。精力的な制作の一方で、景気後退により経済的に困窮し、1879年には妻カミーユが亡くなるなど苦しい時期でもありました。本章では、1870年代から80年代にかけて、セーヌ川流域を拠点に各地を訪れて描いたモネの作品を展示します。アトリエ舟で自在に移動し、戸外で制作した印象派らしい多様な風景画をご覧いただきます。

ヴェトゥイユの教会

1880年 油彩、カンヴァス 50.5×61.0cm サウサンプトン市立美術館
© Southampton City Art Gallery

パリから北西に60kmほど離れたヴェトゥイユを、セーヌ川に浮かべたボートの上から描いています。教会を中央に据えたヴェトゥイユの街並みの下には、緑の土手とボート遊びに興じる人々が描かれ、それらと空を映し出した川面が画面の下半分を占めています。モネは揺らぐ水面への映り込みを見えるがままに描写しようと試み、短い筆致で軽くたたくように筆を運んでいます。

モネのアトリエ舟

1874年 油彩、カンヴァス 50.2×65.5 cm クレラー=ミュラー美術館
© Collection Kröller-Müller Museum, Otterlo, The Netherlands, photo by Rik Klein Gotink

セーヌ川に係留されたアトリエ舟を中央に、奥の岸辺にはアルジャントゥイユの森や遊歩道、建物が描かれています。水面は穏やかで、アトリエ舟や周囲の景色が静かに映り込んでいます。風景画家のドービニー(1817-78)に倣って造られたアトリエ舟は、ボートの上に小屋を設えたもので、モネはこれに乗って川面や水辺の光景を多数描きました。

アトリエ舟

1876年 油彩、カンヴァス 54.5×65.3cm ヌシャテル美術歴史博物館
Legs Yvan et Hélène Amez-Droz en 1979. No. Inv. AP 1658,
© Musée d’art et d’histoire de Neuchâtel (Suisse).

ヴェトゥイユの春

1880年 油彩、カンヴァス 60.5×80.5㎝ ボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館
© Collection Museum Boijmans Van Beuningen, Rotterdam.
Loan: Stichting Museum Boijmans Van Beuningen,
Donation: Mevr. E.Y. van Beek-van Hoorn Janssen 1951/
Creditline photographer: Studio Tromp